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2018/0506

その他

不動産の売却に関する“税金”の計算について

今回は不動産を売却される際に、必ずといっていいほどご質問を頂く“税金”を計算するため
の基本事項について解説していきたいと思います。
不動産を売却したことによって生じた所得は譲渡所得といい、給料や事業での所得と分離
して所得税・住⺠税が課税されます。

【基本的な計算とポイント】
譲渡所得 = 売却金額 −(購⼊金額−減価償却費⽤ + 譲渡費⽤)× 税率

現在のローン残債と売却額との差異を利益と考えてしまう方が多いのですが、手元に残る
金額の計算と税金計算は全く別です。
ここでのポイントは「①減価償却」「②譲渡費⽤」「③税率」の3 点です。

① 減価償却
実際支出されるものではないため、確定申告する機会の無い人にとっては普段意識するこ
とが無い概念でとっつきにくいと感じらる部分です。
簡単にいうと、時間の経過によって次第に価値が減少する資産の、価値の減少分を費⽤とし
て損失計上する経理処理のことです。
そのため、価値の減少が見られない土地は「非償却資産」であり、あくまで建物金額のみを
計算の対象とします。
資産の使い方によって消耗頻度は異なるはずですが、そこに自由度をもたせると、利益操作、
ひいては脱税につながる行為につながる可能性があるため、資産毎にどの程度資産として
価値を有するのかを定めた「耐⽤年数」があるので、こちらの数字を⽤いて計算を行います。
建物購⼊代金 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
非事業⽤の経過年数を計算する場合、6 ヶ月以上の端数は1 年とし、6 ヶ月末満は切り捨て
ますので、計算間違えがないようにご注意下さい。

② 譲渡費⽤
経費として計算するものと計算できないものがあります。
譲渡費⽤の範囲は、法律(所得税法33 条)と通達(所得税法基本通達33-7、33-8)に、そ
の範囲が書かれていますが、ポイントを下記に抽出しました。
1.「直接」要した費⽤
2.「譲渡価額を増加させるため」に要した費⽤
3.「維持又は管理に要した費⽤は、譲渡費⽤に含まれない」
通達では、ここまでしか説明しておらず、実際の売買では色々な経費、費⽤が発生し、
判断に迷うこともあるかと思います。
一般的には、仲介手数料・収⼊印紙・測量費⽤・立退料・取壊費⽤などが挙げられます。
修繕費や抹消登記費⽤、税理士への報酬などは売却するに必要な費⽤とはみなされない(費
⽤をかけずとも売却は出来ると考えられている)事がほとんどですのでご注意下さい。

③ 税率
土地建物を譲渡した場合の⻑期譲渡所得と短期譲渡所得は、譲渡した年の1 月1 日現在に
おいて、所有期間が5 年以下か、5 年を超えるかにより判断します。
短期譲渡所得は39.63%、⻑期譲渡所得は20.315%です。
譲渡した年の1 月1 日現在で計算をするため、実質は5 年間所有していても、税率は短期
譲渡所得に該当するケースがあるため、所有期間が6 年未満の場合は注意が必要です。
また、特定の条件を満たし、かつ10 年以上所有している場合は、軽減税率の特例が適⽤さ
れ、課税譲渡所得6,000 万円以下の部分については14.21%が適⽤されます。

【FP古賀の視点】
不動産を相場より高く売ることは周辺の状況などにより難しいケースもありますが、使え
る経費を洗い出し、適⽤可能な特例を適⽤することで税金を減らすことは知ってさえいれ
ば確実に出来る最終手元に残るお金を増やすことが出来る手段です。

また税務上損失が出てしまったとしても適⽤出来る特例や、使ってしまうと新居での住宅
ローン控除が適⽤出来なくなる特例などもあるため、安易な判断は避け、一度専門家も含め
た不動産売却の戦略を考えていくことが重要です。